実証都市から実装都市へ
~ポスト万博シティけいはんなを支えるグローバルイノベーションエコシステム~
実証都市から実装都市へ
~ポスト万博シティけいはんなを支えるグローバルイノベーションエコシステム~
【プロフィール】
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)代表取締役副社長
鈴木 博之(すずき ひろゆき)
元NTT研究所を経てATRに入社。ATRおよびATRグループの経営戦略の策定・推進と研究成果の事業化を統括するとともに、けいはんな学研都市におけるグローバルイノベーションエコシステムおよびスタートアップ支援プラットフォームの構築を主導
1. これまでの到達点
1-1. グローバルイノベーションエコシステムの構築
ATR は、連携覚書を締結した 23 か国・47 機関を核に(図1)、49 か国・1,470 機関(内、国外 644 機関)からなるグローバルイノベーションネットワークを構築してきました。このネットワークを活用し、これまで国内外 344 社(国内 125 社、国外 219 社)のスタートアップ等の日本市場への参入、PoC、事業共創を支援しています。
その中核事業が、2019 年度に開始したスタートアップ支援プログラム KGAP+(Keihanna Global Acceleration Program Plus)です。これまで 29 か国、253 社(内、海外 204 社)が参加し、現在第 15 期を実施中です。参加採択率 4%(第 15 期)、国内企業等とのマッチング率 67%(第 1~14 期)という国内外のディープテックスタートアップを日本市場へつなぐ国際的アクセラレーションプログラムとして発展しています。
さらに、これらの活動は ATR の研究シーズや成果展開事業会社の新事業創出への寄与に加え、内閣府「スタートアップ・エコシステム拠点都市」における京阪神コンソーシアムの第 1・第 2 期連続選定にも貢献し、けいはんな学研都市の国際的なイノベーション拠点としての価値向上につながっています。
図1. グローバルイノベーション中核連携機関
1-2. 大阪・関西万博 2025 及びけいはんな万博 2025
ATR は、大阪・関西万博 2025「Global Startup EXPO」において近畿経済産業局推薦セッションを企画・モデレーションし、関西のグローバルイノベーションエコシステムの強みを国内外へ示すことができました。
また、並行して実施されたけいはんな万博 2025 ではスタートアップ部会を主導し、日本・カナダ・台湾のスタートアップ 6 社による KPoC(Keihanna Expo Global PoC Challenge)を実施しました。地域住民や地域施設を活用した社会課題解決型 PoC を通じて、①強力な研究開発基盤、②住民参加型 PoC 環境、及び③国際連携ネットワーク という、けいはんな学研都市の強みを国内外へ発信しました(図2)。
2. けいはんな学研都市第5期ステージプラン ~ポスト万博シティけいはんな~
大阪・関西万博及びけいはんな万博 2025 を契機に、けいはんな学研都市は「ポスト万博シティ」として、実証都市から実装都市への進化を目指しています。この実現に向け、2026 年度から次の 10 年間を対象とする「第 5 期ステージプラン」を策定しました。
ビジョンでは、①持続的に発展する「未来都市」、②人材が活躍する「人材成長都市」 、及び③多様な主体が価値を共創する「共創都市」 の 3 つの都市像を掲げています。これらを実現するため、①研究成果の社会実装、②交流・連携と情報発信、③科学技術と文化の融合、及び④都市形成・交通アクセスの向上の 4 つの取組を推進します。この中で関西の成長に寄与する東西軸を中心とした広域連携は重点施策の1つとして位置付けられており、大阪地域振興調査会の取組との連携にも期待があります。
図2. けいはんなグローバルスタートアップ PoC チャレンジ(KPoC)
3. ATR が目指す未来 ~実証都市から実装都市への進化~
第 5 期ステージプランを踏まえ、ATR は「住民参加型 PoC 環境」というけいはんな学研都市の強みをさらに発展させる取組を推進します。
AI の活用が当たり前となる時代には、技術そのものではなく、社会が新たな技術を受け入れ、改善しながら実装していく仕組みが競争力の源泉となります。けいはんな学研都市では、技術性能だけでなく、住民との共創を通じて社会受容性まで検証できることが大きな強みとなります。
その実現に向け、けいはんな学研都市、京都府、企業等との連携を強化し、けいはんな万博 2025 で開始した KPoC を共創プラットフォームとして継続・発展させ、国内外の社会課題・グローバル課題の解決に取り組みます。
さらに、人と人とのリアルな共創基盤と、AI が生み出すデジタルネットワークを融合し、住民・企業・大学・スタートアップ・自治体・イノベーション支援機関が世界とつながる「人とデジタルの共創実証拠点」の形成を目指します。ATR は、この新たな共創基盤を核として、けいはんな学研都市がポスト万博シティとして世界の社会課題解決と新たな価値創出を牽引するグローバルイノベーション都市へ進化することに貢献していきます。